アブストラクトゲームとは

アブストラクトゲーム (Abstract Strategy Games) は、囲碁、将棋、チェス、オセロなどに代表されるボードゲームの一ジャンルです。一般に勝敗が運に左右されず、ゲームの価値がテーマの追体験に依存しないようなものを指します。 

古代・中世のボードゲームの多くはアブストラクトゲームであり、娯楽あるいは競技(マインドスポーツ)として、人類の精神史に関わって発達してきました。現代では情報理論の研究と結びつき、AIの開発にも密接に関連しています。

 

定義について

アブストラクト・ストラテジーゲームは、通常は具象的な道具を用いないことからそのように呼ばれていると考えられています。しかしこの言葉の起源は曖昧であり、その範囲もかならずしも確定しているものではありません。

J. Mark Thompson「Defining the Abstract(アブストラクトを定義する)」(2000)では、アブストラクトゲームの特徴として以下のものを挙げています。

  • (通常は)テーマがない
  • 隠蔽要素がない
  • 運の要素がない
  • 交互にプレイする
  • (おおむね)2人用である

場合によっては、多少の運要素や隠蔽要素を許容したり、または単にテーマのないゲーム全般を指して使われている場合もあることに注意する必要があります。

より詳しい議論は拙稿「アブストラクトゲームはなぜそう呼ばれているのか」 (note) をご参照ください。

 

種類について

アブストラクトゲームの種類・類型は、伝統的に勝利条件に基づいて分類されています。定説があるわけではありませんが、ここでは『Mathematical Games, Abstract Games』(Joao Pedro Neto, Jorge Nuno Silva, 2013)を参考に6つのタイプに分けて紹介します。

捕獲のゲーム - 一定のコマを捕獲することによって勝つもの。チェス、将棋、チェッカーなど。
到達のゲーム - コマが特定のスペースを占めることで勝つもの。チャイニーズチェッカーなど。
配列のゲーム - コマを一定の形に並べることによって勝つもの。三目並べ、五目並べなど。
接続のゲーム - 一定条件をみたすコマのグループを作ることによって勝つもの。ヘックスなど。
領土のゲーム - より広い領域を占領することによって勝つもの。囲碁、オセロなど。
妨害のゲーム - 相手を行動不能にすることによって勝つ(または負ける)もの。ニムなど。

ただし2つ以上の勝利条件を持つゲームなどもあるため、必ずしもすべてのゲームをすっきり分類できるわけではありません。

 

Art Source: Ajax and Achilles gaming, ca.490 BCE from Wikimedia Commons